日本比較経営学会賞

 現在、2019年の日本比較経営学会賞候補作を募集しております。推薦期間は、2019年12月末日までです。詳細は、以下に掲載されている規程をご覧ください。

申し込み先は、学会賞審査委員会 國島弘行宛(kuni92*soka.ac.jp)*を@に読み替えてください。
となります。

 

日本比較経営学会賞 候補作推薦票

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過去の学会賞

◆日本比較経営学会第1回学会賞について◆(2015年5月)

学術賞:山崎敏夫会員 受賞作『German Business Management』Springer 2013年
奨励賞:該当者なし

学術賞審査報告:
 本対象作品は、第2次世界大戦後のドイツ経済の発展とドイツ企業経営の変化を動態的に分析するフレームワークとして、「国家と企業の関係」「労使関係」「企業内関係に依拠した産業システム」「金融システム」「生産力構造」「産業構造」「市場構造」「企業―市場関係」という8つの視点を提示し、膨大な先行研究と第1次資料を駆使して問題の解明に迫った力作である。
 とりわけ、戦後の日独両国の資本主義の発展と企業経営の歴史的進化を比較検討し、その差異を鋭く解明したことは学術的に高く評価されるべきものである。また、研究成果を英語で世界に発信した点も大いに評価できる。
 こうした研究努力と優れた研究成果は、本学会の学術賞に十分値するものであると判定できる。

 

 

◆日本比較経営学会第2回学会賞について◆(2016年5月)

学術賞:該当者なし

奨励賞:該当者なし

 

 

◆日本比較経営学会第3回学会賞について◆(2017年5月)

学術賞:岩﨑一郎会員 受賞作『法と企業統治の経済分析:ロシア株式会社制度のミクロ実証研究』

     岩波書店、2016年

奨励賞:該当者なし

 

学術賞審査報告:

 本書は、社会主義計画経済から資本主義市場経済へと移行する過程でロシアが導入した株式会社制度の組織と経営の実体を、ロシア全土で実施した大規模な調査に基づき、ミクロ実証経済学的な視点から解明を試みたものである。著者は「法と経済学」「企業金融論」「組織経済学」という今日の企業内部組織の分析に援用される理論と分析手法について、その拡張と開発に資することを本書の目的にしている。すなわち、これらの理論はアメリカを中心とする西側先進諸国において研究され、分析ツールとして進化してきた経緯がある。しかしながら、高度に発展した資本主義諸国においては有効な分析手法であったとしても、計画経済から市場経済への移行過程にあるロシアにおいて、それがそのまま適用可能かどうかは未知数である。仮に、ロシアの置かれた状況に応じて理論の再構築が必要となるとしたら、その内容はどのようなものになるのかを著者は本書を通じて検証しようと試みている。
 また、本書は分析手法としてミクロ計量経済学のアプローチ法を採っており、2005年と2009年にロシア全土で実施した800社を超える企業調査で得られたデータをもとに統計学的分析を行っている。そのプロセスは「理論に基づく仮説の構築」「実証分析」「仮説の検証」という科学的プロセスを踏んでおり、主観を排除し客観性を担保した分析結果は一定の説得力を有している。分析の射程は、ロシア企業の法制構造、開放株式会社と閉鎖株式会社の選択要因、機関構造選択に関する企業レベルの決定要因、取締役会の組織構成とその決定要因、監査体制の選択要因、監査役会および取締役会の質や特徴が企業存続に与える要因等、広範多岐に及んでいる。
 このように本書はロシア株式会社制度に対する深い思考と大規模な実態調査に基づいた実証分析により、ロシア企業分析において他に類を見ない有為なインプリケーションを導出している。またミクロ経済学と比較経営学の接合点を探求している点において、その学術的な貢献は大きい。
 以上のことから、本書は日本比較経営学会の学術賞に値するものと判断される。

 

 

◆日本比較経営学会第4回学会賞について◆(2018年5月)

学術賞:該当者なし

奨励賞:該当者なし

 

 

◆日本比較経営学会第5回学会賞について◆(2019年5月)

学術賞:森原康仁会員 

 

受賞作『アメリカIT産業のサービス化』(日本経済評論社、2017年,xi+242ページ)

 

学術賞審査報告:

 本書は、IBMのその固有の規模や範囲を生かしながら発展し、社会諸資源を統合しながら発展してきたかを明らかにすることが目的である。1990年代におけるMicrosoftやIntelの「成功」(以下、Wintelモデル)でアメリカIT産業の復活が描かれている一方で、IBMへの関心が総じて少ないことに本書の分析関心の発端を伺うことができる。また、IT産業の構造転換を通してアメリカ経済のサービス化も描かれているといえる。

 第1章では、著者が修士論文の執筆には始まる問題関心や分析意義が記されており、いくつもの先行研究のサーベイランスが行われており、統合化モデルとWintelモデルとの相克を動態的に明らかにすることに本書の独自性がまとめられている。

 第2章では、いわば日常用語として利用されているいわゆるIT産業についてOECDやアメリカ商務省の定義が示されている。さらに著者独自にさらに狭義の定義なされていることが特徴的である。くわえて、1990年代のアメリカIT産業は、コンピュータ製造から「サービス産業化」へと産業構造の転換期であったことが記されている。

 第3章では、とITサービスの位置づけがなされている。とりわけHammer and Champy『リエンジニアリング革命』の引用もなされ、その後の1990年代半ばの経営組織の改革事例にも触れられていることの特徴的である。さらに経営組織の改革はIT関連部門のアウトソーシングによる経営コストの削減目的でなされていることが記されている。

 第4章では、業界再編の潮流に対するIBMの独自性、もしくは本書でいうところの先行性を浮き彫りにしている。特に「先行研究の多くは、IT産業の産業構造が垂直特化型に変貌したことは強調するものの、そのもとで諸企業がとりうる戦略の多様性については具体的に分析せず、(中略)専業企業化だけが諸企業の採りうる唯一の戦略的選択肢であると暗黙のうちに前提する限界があったといわざるをえない」(94ページおよび107ページ)の言及は、本書の問題関心にも通底するものであり、また先行研究と本書との間に横たわる「溝」が鋭く指摘されている。

 第5章では、ルイス・ガースナー(Louis V. Gerstners)によるIBMの経営再建プロセスを中心に述べられている。特に、「『組織の再統合』と『社会諸資源の内部統合化』という線に沿った主体的なプロセス」(166ページ)が明らかにされている。既存研究では、IBMの取るべき戦略を「Sun(Microsystems:評者注)のような専属モデルをとるほかない、と指摘していた」(166ページ)のだが、IBMは実際にはその選択肢を取らなかったのである。すなわち、ガースナーは、「組織の再統合化」と「社会諸資源の内部統合化」であったのであることから、「IBMにおける『統合化モデル』は、きわめて独自であると同時に特異であったと評価しうる」(167ページ)のである。ここにもWINTELとの相対化で析出された本書の独自性であるといえる。

 第6章では、WINTEL連合とIBMによる統合化 サービスとの「相克」が分析されている。特にオープンソース戦略によってIBMはMicrosoftのOSの切り崩しを始めたことが記されている。すなわち、WindowsがMicrosoftから提供されるOSソフトであったのに対して、IBMはLinuxを提供し、インターネットを介して誰もがアクセスできるような戦略を取ったのである。こうした戦略を取る背景には「オープンな製品を組み合わせ、統合的なソリューションでほぼ無料の製品が市場に浸透すればするほど、IBMが特化しているサービス事業の価値が高まることになる」(194ページ)のである。この点からもWINTELとの相対化によって析出された特徴である。

 第7章では、「IBMにみられる主体的なあり方は、『Wintelモデル』にもとづく一連の諸を明確に記されたとおり、既存研究とは一線を画している。また、1)「IT産業のグローバルな生産ネットワークをIBMのようなアメリカのソリューション・サービス企業がいかなるかたちで統治(governance)しているか」(206ページ)、2)「IBMらがおこなっているソリューション・サービス事業が持続的な競争優位を獲得しつづけられる根拠についての検討」(207ページ)が残された課題である。

上記のように、先行研究の大勢がデファクト・スタンダードであるWintelモデルに位置づけられたのだが、こうした分析軸からすればIBMは特異な存在であることになる。つまり、既存の研究を踏まえたIBM理解のキーワードが「相対化」である。本書の貢献は、既存研究へのアプローチのみならず、IBMとの相対化で生み出された批判的な分析視角も著者のアグレッシブな姿勢を反映したものであると高く評価される。上記の理由から、本書は学会賞に相当する研究であると評価される。

 

 このように本書は、膨大な先行研究を分析し、それらが1990年代アメリカ製造業の「復活」を垂直的特化であるWintelモデルに求め、IBMを「敗者」としていたとしていたと指摘する。それに対し、本書は、IBMがすでに90年代に「包括的かつ統合的なソリューション」提供を事業領域の中核とした、補完的技術・資源の「統合化モデル」の構築で復活していたことを多くの資料を用いて明らかにした。さらに、2000年代では、IBMが先駆的に展開した統合化戦略が、多くの企業で採用され、Wintelモデルを超える「普遍性」をもってきていると主張する。このことは、統合化戦略を採用するGAFAの産業支配力を、本学会誌論文「プラットフォーム・ビジネスとGAFAによるレント獲得」で、著者はさらに分析している。今後、GAFAとIBMとの関連も期待したい。

 本書のアメリカ産業・経営研究の貢献は、極めて大きいといえる。日本比較経営学会賞(学術賞)に相応しい研究成果であると評価する。

 

「日本比較経営学会賞」規程

改正 2016年5月6日

改正 2016年5月8日

 

1.(目的)

 日本比較経営学会は、会員の研究活動を奨励し、研究の発展に資するため、日本比較経営学会賞(以下「賞」)を制定する。

 

2.(賞の種類と内容)

 賞は、日本比較経営学会学術賞(以下「学術賞」)及び日本比較経営学会奨励賞(以下「奨励賞」)の 2 種類とし、毎年審査し授与することができる。授与は、それぞれ原則として 1 篇とする。受賞者には、表彰状及び記念品を授与する。

 

3.(学術賞)

 学術賞は本学会の会員が賞を授与する総会の3年前の11月から前年10月までに刊行した著作物のなかで特に優れた作品にたいして授与する。なお、著作物は日本語文献であるか外国語文献であるかを問わないが、単独の著書でなければならない。

 

4.(奨励賞)

 奨励賞は賞を授与する総会の前々年11月から前年10月までに本学会の学会誌である『比較経営研究』に掲載された学術論文のなかで優れた作品に対して授与する。奨励賞の対象者は、原稿締め切り日に満 45 歳以下でなければならない。なお、奨励賞は、同一人が再度受賞することはできない。また、統一論題報告をもとにした論文は審査の対象に含めない。

 

5.(審査委員会)

 審査委員会(以下「委員会」)は、賞を授与する総会の前年 5 月に開催される理事会において決定するものとする。委員会は理事会が選出する学会賞担当常任理事を委員長とし、理事会の推薦にもとづく東西各 2 名の委員を加えた合計 5 名で構成され、参考対象の審査を行う。なお、理事会の推薦にもとづく委員には、奨励賞の対象となる学会誌編集委員長を含むものとする。

 

6.(候補著作の推薦)

 学術賞の選考対象に適合する著書について、会員は賞を授与する総会の前年の 12 月末までに、所定の様式の文書によって自薦・他薦することができる。なお、審査委員会は、推薦によるもの以外の著書を選考対象に加えることができる。

 

7.(審査)

 選考委員会は、4 月末日までに受賞著作を決定する。審査委員長は、総会直前の理事会に審査経過を報告して承認を求める。なお、審査委員の著書・論文が選考対象となった場合、当該委員は最終審議に参加できない。

 

8.(表彰)

 会員総会において、審査委員長が審査結果を報告し、理事長が賞を授与する。あわせて他の適当な方法により、周知と顕彰を行う。

 

9.(幹事の委嘱)

 審査委員長は、会員の中から若干名を委員会担当の幹事に委嘱することができる。

 

10.(規程の改正)

 本規程の改正は、理事会の承認によって行う。

 

11.(付則)

 この規程は、2014 年 5 月 10 日に制定し、同日から施行する。第 1 回日本比較経営学会賞の授与は、2015 年 5 月に開催される会員総会において行う。