理事長挨拶

「理事長就任の挨拶」

日本比較経営学会理事長 桜井 徹

 

 2017年5月13日、福岡大学の会員総会において、理事・監事選挙が実施され、20名の理事と2名の監事が選出された。翌14日の第1回理事会において、互選により私が理事長を拝命することになった。

 古希に3年ばかりしか残っていない老体が長い伝統のある本学会の会務総括の任に堪えられるのか、正確に言えば、ふさわしいか、逡巡するところはあった。本学会の創設に寄与された研究者の不肖の弟子である身としてはなおさらである。とはいえ、お役にたてるのであれば、この上ない光栄であると思い、理事長職をお引き受けした。幸いにも、國島弘行・村上了太両常任理事をはじめ、理事・監事各位は識見・能力共に優れた方々ばかりである。また、百田義治前理事長及び駒澤大学事務局の松本典子・松田 健両会員のバックアップにも感謝である。

 本学会は、社会主義経営学会の創設からは41年、比較経営学会および日本比較経営学会に改称してからでも各々22年、12年になる。この間、先人の努力のおかげで、研究活動の蓄積も行われてきたところである。

 しかしながら、解決しなければいけない課題も多い。不遜を承知で言えば、さしあたり会員数の伸び悩みを指摘したい。手元にある資料では、会員数は、1986年3月に240名であったが、2007年5月に224

名となり、そして2017年5月現在、179名である。学会報告者数も31回大会から35回大会くらいは30人前後であったが、それ以降は20人台となっている。コメンテーターなどを省いた概数である。学会活動の「量」の伸び悩みと表現できるのではないかと思われる。

 このことは、学会の存在意義が低下したことを意味するのであろうか。たしかに、本学会が社会主義経営学会を前身とし、1989年の「ベルリンの壁」崩壊以降の中でも、「資本主義対社会主義」のみを研

究テーマとしていたとすれば、比較経営学会の存在意義は低下したとこたえることもあり得ただろう。だが、「資本主義対資本主義」論に見られる資本主義の多様性、BRICSをはじめとする新興国の台頭、さらに営利企業vs.社会企業などの諸現象を正確に捉えて、日本比較経営学会は、今日では、そのアイデ

ンティティーを、これまでの「社会主義諸国」ないしは「移行諸国」の比較分析に加えて、市場と社会の相互作用の中で成立する多様な経済システムや企業システムの比較分析の中に見い出すに至ったのである。2006年、学会の英知を結集して出版された『会社と社会』における諸業績がそのことを物語っ

ている。

 「グローバリゼーション下で進行しているエネルギー・環境問題、貧困・格差問題、労働・人権問題の危機的状況をふまえ、多様な市場経済を基礎とする多様な企業経営の『社会発展史的視角』から『企

業とは何か、企業経営とは何か』を問う日本比較経営学会の意義が一層重要性を増している」(酒井正三郎「比較経営研究とはなにか―『日本比較経営学会』40周年に寄せて―」『比較経済体制研究』2015, p.2.)のである。

 このように学会の理論的・実践的存在意義が高まっている。が同時に、会員数・報告者数にあらわれる学会活動の「量的」伸び悩みも存在する。

 両者を単純に直結すべきではない。関連があるとしても、簡単には答えがでない問題である。さしあたりの一つの答えは、『学会ニュース』の発行、学会誌の充実、大会報告テーマの設定、報告者の充実などの学会活動をさらに活性化することであると思われる。

 多くの諸先輩の労苦の上に、今日の日本比較経営学会がある。

 会員各位のご協力をお願いしたい。

 

2017年7月31日